『ミラノ 霧の風景』(須賀敦子) 夕暮れ後、窓の外を見ていると静かに霧が流れてくる。ミラノ生まれの夫と過ごした懐かしい街の記憶。 

こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。

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わたしの好きな本のご紹介です。

『ミラノ 霧の風景』 須賀敦子 白水Uブックス

良質の文章を若い人に読んでほしいなと思う時にはこの本をお勧めしたいと思います。

須賀敦子さんの最初に書いたエッセイ。
イタリアに住み、ミラノのコルシア書店などで左派系知識人たちと交流。そこで知り合った鉄道員の家庭出身の夫と結婚します。

日本人の心をもちながらイタリアの人々の心に寄り添い、イタリアでの交友や、大好きな詩人についての思いなどを書きつづった珠玉のエッセイ集です。

読んでいるとミラノの情景が、まるで自分のふるさとのように身近に感じられてきます。

夫の好きなポレンタ

特に好きなのは須賀さんが、夫の帰りを待ちながら夕食に、ポレンタ(トウモロコシの粉を鍋の中で練りに練る料理)を作っているところです。

夫は仕事から帰って来て玄関のドアを開けるなり、
「あ、ポレンタだな、いいにおいだ、といいながら台所に入ってくる」

彼にとってポレンタは、おふくろの味のようです夫の育った環境や味覚を懸命に大事にしようとする、若き日の須賀さんのやさしい姿が浮かんできます。

窓の外に霧が落ちてくる

そしてミラノはロンドンと同じくらい、いや、それ以上に霧の深い街のようです。

「年にもよるが、大体は十一月にもなると、あの灰色に濡れた、重たい、なつかしい霧がやってきた。朝、目がさめて戸外の車の音がなんとなく、くぐもって聞こえると、あ、霧かな、と思う。それは雪の日の静かさとも違った。」

この霧の降りてくるところの描写、とても美しいですね。
さらに、

「夕方、窓から外を眺めていると、ふいに霧が立ちこめてくることがあった。あっという間に、窓から五メートルと離れていないプラタナスの並木の、まず最初に梢が見えなくなり、ついには太い幹までもが、濃い霧の中に隠れてしまう。」

ミラノ育ちの夫は霧の日の静かさが好きで、「『ずうっと肺臓の奥深くまで』霧を吸い込むとミラノの匂いがする」という方言の歌をよくうたったそうです。ここもしみじみと、いいですね。

余談ですが、夫と日本に里帰りした際の写真を何かで見ましたが、夫はフランス映画にでも出てきそうな、黒いコートのよく似合うハンサムな男性でした。

ミラノというとファッションの街というイメージがありましたが、この本を読んで歴史や、ミラノの人々の暮らし、政治・社会運動など、さまざまなことに関心を持つようになりました。
さらにキリスト教国での、宗教と政治、さらに書店経営までもが結びつく不思議さを感じました。

トリエステの詩人ウンベルト・サバ

須賀さんはこの本の中で、大好きな詩人、ウンベルト・サバについても紹介しています。サバは一生のほとんどを海沿いの町トリエステで過ごした詩人です。

こちらは、「トリエステ」という詩の一部。
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トリエステのうつくしさにはとげがある。
たとえば、花をささげるには、あまり
ごつい手の、未熟で貪欲な
青い目の少年みたいな。
  
サバには、「地中海」という詩集もあり、その中の「ユリシーズ」も不思議で美しい詩です。

須賀さんは、この詩人について、たいへん愛情深く描いています。須賀さんの訳した「ウンベルト・サバ詩集」もあるのでぜひ読んでみてください。

今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。

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