ノベル
わたしの拙い小説のご紹介。
老いとは何か。
わたしたちはどこに向かっているのか。
生きる意味についても考えます。
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2025年10月17日
千日劇場の辺り ―奇妙な案内人〈2〉
それ以上、聞いているのがどうにもつらくなって、正木氏の少し赤くなった顔を見つめていった。アゴのあたりに髭の剃り跡が青々としている。髪...
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2025年10月16日
千日劇場の辺り ―奇妙な案内人〈1〉
さっきまでの緊張感がまだ頭のどこかに残っていて、もう当分だれの顔を見るのもイヤだ、口も聞きたくない、と思いながら急ぎ足ですべすべした...
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2025年09月27日
千日劇場の辺り ―千日劇場〈5〉
千日劇場は建てられてまだ間がない。しっとり濡れたエントランスの向こうで劇場の照明が小雨に反射して燦然とした光を放っている。四十五日間公...
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2025年09月22日
千日劇場の辺り ―千日劇場〈4〉
こういった雑誌に掲載されているのはほとんど主演・助演クラスの役者である。同じ劇団員とは言え、黒エンビや、三つ揃いスーツに身を固め帽子を...
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2025年09月19日
千日劇場の辺り ―千日劇場〈3〉
舞台好きの彼女たちにはそれぞれ好きな役者がいて、追っかけとまではいかないけれど、その熱中の度合いが美佐江の考えではどうにも推しはかれ...
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2025年09月14日
千日劇場の辺り ―千日劇場〈2〉
思い起こせば、もう二十年近く前のことである。「ほんとにいいの」 美佐江はまだ疑わしくて念を押すように訊いた。「いいですよ」 若い女...
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2025年09月05日
千日劇場の辺り ―千日劇場〈1〉
根本 幸江 「ちょっとこちらへ来ていただけませんか」 軒下に立ってい...
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2025年06月24日
玉木屋の女房〈23〉了
多江は女たちに訊いて居場所を確かめると、礼を言って、背中に女たちの視線を感じながら歩土間の向こうにいていった。「戸が外れそうになった...
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2025年06月17日
玉木屋の女房 〈22〉
多江は、最近いつもあの役者のことを考えている。ボーッとしていて、ふと気がつけば、あの顔を思い描いているのだ。いつかは夢の中で、大首絵...
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2025年06月12日
玉木屋の女房〈21〉
細長い道がどこまでも続いている。道の両側には紫陽花のような青い花が被さっている。前を非ひとりの女が歩いている。母親のゆらに違いない。...
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2025年06月03日
玉木屋の女房 〈20〉
「湯漬けが冷めちまうから、早く呼んでおいで」ゆらに言われて、工房に足を踏み入れながら、多江は二人に声をかけた。 「お昼をお上がりなさい...
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2025年05月29日
玉木屋の娘〈19〉
このところ義母のゆらの機嫌がいい。「豆腐を買ってきて。それから八百吉へいって、菜っ葉もね。今日は肌寒いから、温かいものを炊いて食べさせ...