ノベル
わたしの拙い小説のご紹介。
老いとは何か。
わたしたちはどこに向かっているのか。
生きる意味についても考えます。
-
2025年11月14日
千日劇場の辺り ―奇妙な案内人〈9〉
「ここで何をなさってるんですか」制服の女性はいった。「話してただけですよ」正木さんは割にはっきりした口調でいった。「困ります。勝手にい...
-
2025年11月10日
千日劇場の辺り ―奇妙な案内人〈8〉
隣の展示室には、硝子のショーケースがなく、壁に藤原定家筆の小倉色紙などが並んでいた。その先に能面がいくつか展示されていた。 中央に鼻...
-
2025年11月09日
千日劇場の辺り ―奇妙な案内人〈7〉
職員と話していた男は、やがて軽く頭を下げて何度かうなずいた。職員は顔をしかめたままで、少し男から離れ、しみじみと全身を眺め回した後、...
-
2025年11月03日
千日劇場の辺り ―奇妙な案内人〈6〉
話は専門的で微に入り細にわたっていておもしろい。それに博学で骨董の知識も深く一つひとつが人の生のような流転の末ここにあるのだとよくわ...
-
2025年10月25日
千日劇場の辺り ―奇妙な案内人〈5〉
エレベーター乗り場の手前に小さな宝石店があった。 店頭に手品師のように黒のスーツを着て白手袋をはめた男が立っていた。男の目の前には装...
-
2025年10月23日
千日劇場の辺り ―奇妙な案内人〈4〉
外に出ると真昼の日差しが明るかった。美佐江はそれを避けるように、建物の陰に沿って歩いて行った。 いきなり大きなガラス張りのビルが現わ...
-
2025年10月17日
千日劇場の辺り ―奇妙な案内人〈2〉
それ以上、聞いているのがどうにもつらくなって、正木氏の少し赤くなった顔を見つめていった。アゴのあたりに髭の剃り跡が青々としている。髪...
-
2025年10月16日
千日劇場の辺り ―奇妙な案内人〈1〉
さっきまでの緊張感がまだ頭のどこかに残っていて、もう当分だれの顔を見るのもイヤだ、口も聞きたくない、と思いながら急ぎ足ですべすべした...
-
2025年09月27日
千日劇場の辺り ―千日劇場〈5〉
千日劇場は建てられてまだ間がない。しっとり濡れたエントランスの向こうで劇場の照明が小雨に反射して燦然とした光を放っている。四十五日間公...
-
2025年09月22日
千日劇場の辺り ―千日劇場〈4〉
こういった雑誌に掲載されているのはほとんど主演・助演クラスの役者である。同じ劇団員とは言え、黒エンビや、三つ揃いスーツに身を固め帽子を...
-
2025年09月19日
千日劇場の辺り ―千日劇場〈3〉
舞台好きの彼女たちにはそれぞれ好きな役者がいて、追っかけとまではいかないけれど、その熱中の度合いが美佐江の考えではどうにも推しはかれ...
-
2025年09月14日
千日劇場の辺り ―千日劇場〈2〉
思い起こせば、もう二十年近く前のことである。「ほんとにいいの」 美佐江はまだ疑わしくて念を押すように訊いた。「いいですよ」 若い女...

