ノベル
わたしの拙い小説のご紹介。
老いとは何か。
わたしたちはどこに向かっているのか。
生きる意味についても考えます。
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2024年04月23日
ツグミ団地の人々〈立春前 2〉
その朝、里子はおろし立てのタオルをベランダから落としてしまった。 主婦の一日の気分は、だいたい洗濯物を干し終えるまでに決まる。がっか...
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2024年04月20日
ツグミ団地の人々〈立春前1〉
「変なのよ、あの棟に夜行くと、必ずエレベーターホールで人に会うの」 里子はぼやくともなく言った。 息子の健太が新聞紙の上からチラッと顔...
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2024年04月12日
ツグミ団地の人々〈苦い水19 了〉
杏の花が次々とほころびやがて満開を過ぎたその頃、コーヒーショップつぐみに久しぶりに皆川老人がやってきた。団地のウワサでは皆川はずっと...
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2024年04月08日
ツグミ団地の人々〈苦い水18〉
鶴田平八が脳梗塞で倒れたと美佐子が聞いたのは、その数日後の夕刻だった。 肩を落とした様子で店に入ってくると皆川は、珍しくカウンターの...
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2024年04月03日
ツグミ団地の人々〈苦い水17〉
その日、皆川は開店早々から、カウンターの一番奥に座っていた。なんとなく憂鬱そうな顔である。「どうかしたんですか」美佐子は気になって声...
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2024年03月24日
ツグミ団地の人々〈苦い水15〉
「僕はときどき考えるのだよ。人間はなぜ土地を離れて移動したがるのか、ということです。そして帰ってからは、なぜ憑き物が落ちたようになって...
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2024年03月20日
ツグミ団地の人々〈苦い水14〉
水戸の御城下の下を流れる那珂川は、このあたりを悠々として流れたあと、数キロ先の那珂湊でさらに広がって海に吸収されている。 城内の侍...
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2024年03月16日
ツグミ団地の人々〈苦い水 13〉
尊王攘夷を旗印に挙兵した天狗党は、やがて常陸国筑波山を下ると北へと向かっていった。その間にも武士や郷士、農民らが徐々に加わって人数...
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2024年03月12日
ツグミ団地の人々〈苦い水12〉
「それ何? それ何」 聞きたがり屋のタカ子が平八の袖を何度も引っぱる。たまりかねたような顔で平八が言う。「まあ、君たち若いもんに言って...
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2024年03月09日
ツグミ団地の人々〈苦い水11〉
「そもそもが、あんたらが悪い」 平八は、きっとして、皆川をにらんだ。「なんだよ、このじいさんをなんとかしてくれよ」「二人とも友達同士な...
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2024年03月05日
ツグミ団地の人々〈苦い水 10〉
「だから長州の人間っていうのは……」「はあぁ、なんだって」「君がいつか、萩の出身だって話したときから、ああ、長州だな、いつかは言ってや...
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2024年03月01日
ツグミ団地の人々〈苦い水 9〉
「そういえば、この前、あんたと横浜の港に船を見に行ったな」「ああ、おまえが連れて行け、っていったからな」 なんだ、連れだって出かける仲...