病気で倒れ、夢うつつの中に浮かぶ幻想の情景、その後夫に看病されて病床の中でつづる「楽しみの日々」(大庭みな子、講談社)
こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。

『楽しみの日々』(大庭みな子 講談社)
1996年7月の朝に倒れ、そのまま意識を失ってしまった作者。
夢うつつの中で、さまざまな人の声を聞く。
名前は、歳は、いまどこにいますか・・・。亡き父や母の声を聴いたように思うがそれは、医師や看護婦の心配して尋ねる声だった。
半分夢のような中で見る幻想の世界、それが輪郭をもたない詩のような言葉でつづられる。
夕暮れのアラスカの浜辺に海鳥が鳴き夕日を背に老女が立っている。
「海に出て戻らなかった息子が言い残したんです。夕方あんな雲が出たら、次の朝僕は必ずお母さんのところに帰ってきます」
作家というのはそんな状態の中でも、頭の中にこんなに哀しく美しい物語を紡ぎ上げるののだろうか。
本作は、そんな朦朧とした夢うつつの中でつぶやいた言葉を、夫が書き留めておいたものとのこと。混濁した幻想と日常の交錯する、他の作品では味わえない不思議な世界です。
その後、奇跡的に回復。徐々に日常に戻る中で、夫にかいがいしく看病してもらう生活に。
(長年連れ添った夫婦ってやはりいいな、とちょっと思えます)
半分身体は動かせないが、それだけに夫も知人も家族もみんな作者を取り巻く人々が、この上なく愛しい存在と感じられる。そんな病床の中で見る情景が、奇跡のように繊細なことばでつづられています。
また大庭みな子のデビュー作であり、芥川賞を受賞した『三匹の蟹』もぜひ読んで見てください。その才能、特異性、アニミズム的要素など、どれをとっても群を抜いていて心打たれると思います。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。
2026-03-03 by
関連記事

「舟を編む」(三浦しをん)を読んで,辞書を作る苦労がよくわかりました。もっと大切にできたら 
源氏物語で夕顔の巻を読んでいたら、ふと「伊勢物語」の芥川で鬼が一口に女を食べた話を思い出した 
短編集「彼女の部屋」(藤野千夜 講談社文庫) 表題作ほか、8年前亡くなった父がいきなり茶の間に座っている「父の帰宅」など 
あらためて見てみると、純粋すぎる愛っていうのはつくづく怖いものなのだなと。「死の棘 (とげ)」(島尾敏雄) 源氏物語の「六条御息所」は愛が深すぎて生き霊になったけれど。 
『銀色のフィレンツェ』(塩野七生)、花の都フィレンツェを舞台に、粗暴な権力者、苦しめられる人々。そこから起こる事件が描かれる・・・果たして共和制に戻せるのか





