赤ん坊は可愛くて尊い。抱き上げるとやわらかくずっしりと重かった。そこからニセの母子の逃亡生活が始まる。「八日目の蝉」(角田光代)
こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。
「八日目の蝉」(角田光代 中央文庫)
〝八日目の蝉〟とは、どういう意味だったか気になって再読してみました。
赤ん坊は可愛くて汚れなく尊いものです。その子育てもまた。
それをつくづく感じさせてくれる小説です。最初に提示されるのは、赤ん坊を抱き上げたときのやわらかさと、ずっしりとした重さ。
そして笑いかけられて、そのまま離すこともできす、彼女は赤ん坊を連れ去ってしまう。そこから始まる赤ん坊との逃亡生活。
行く先々で出会うのは、見捨てられた家に住む老女や、女達だけで共同生活をしている「エンジェルホーム」。自然農法の野菜販売、カルトに近い女性たちの規律と、教祖的リーダーなど、気になるようなテーマが続いていきます。
そしてどこでも母と子を助けるのは女たちの母性と共同体です。
がらんどうだ、と言われたことがショックだったと、誘拐した女。その誘拐犯に可愛がられて4歳までともに過ごし、実の家にもどればそこはむしろよそよそしさと混乱に満ちていました。
がらんどうは家庭の中にあった。そして女たちの共同生活や逃亡先の島が楽園のように思える誘拐された〝薫〟。家庭とは、親と子とは、赤ん坊を育むとはどういうことかなど、いろいろなことを考えさせられます。
また、蝉は7日間土の中にいてその後、地から這いだし外の光に当たった時はどんな気持ちなるのかなどよく思ったものですが、この小説の中では、外の光に当たったときとはすなわち、ニセの母親から引き離されて船着き場から船に乗せられた(半強制的に)ときです。
引き離される直前ニセの母親にしがみついたときにその体からは、せっけんと卵焼きのにおいがした。けれど、船着き場から船に乗ったときからなんの匂いもしなくなった。ここの描写のところは衝撃的で深く心に残っています。
「人がわさわさ歩いていた。泣くのも忘れてその見たこともない風景にただ目を凝らした。車を降りて、あ、においがなんにもしない、と思った。ずっと嗅いでいたにおいが、あのとき、ぱたりと消えてしまった」
この衝撃を背負い、女の子は7日目からの人生をどう生きていくのでしょうか。
さらに、すでに壊れてしまっている本当の家庭を捨ててどこへ?それがこの小説のテーマのように思えます。心をえぐる衝撃的な傑作長編です。まだの方は、ぜひ読んで見てください。
映画化では、井上真央、永作博美が演じていますが、この作品にはほとんどベストの配役だと思います。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。

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