『笑う月』(安部公房) 直径1メートル半ほどのオレンジ色の満月がふわふわと追いかけてくる。なぜ怖いのかわからない。
こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。

映画化もされた『砂の女』、ほか「箱男」「他人の顔」など、70~80年代に青春を過ごした人にとって、安部公房はただただ凄い作家としか言いようがありません。
最近になって『笑う月』という1975年に刊行された短いエッセイ集があるのを知りました。本の表題にもなっている2番目の「笑う月」は、特に夢について書いています。
「どんなたのしい夢でも、たのしい現実に遠く及ばない反面、悪夢のほうは、現実の恐怖を遠く上回る場合が多いようです」
として、とくに何度も経験したなじみ深い怖い夢は、「笑う月に追いかけられる夢だ」という。
「そいつは、直径1メートル半ほどの、オレンジ色の満月で、地上三メートルばかりのところを、ただふわふわと追いかけてくる。」
なぜそれが恐怖なのか作者に自身にもよくわからない。わからないのだが怖い。
そして夢は、意識の下で書き続けている補助エンジンなのでは・・・と。つまり夢と現実ははっきり別れるものではなく、眠っている中でも意識下で作業しているということでしょうか。
意識下でも創作を続ける、作家の頭の中をのぞき見たような楽しさも。
ヒトそっくりの動物「ウエー」
また特に興味深かったのは、『藤野君につて』。
この中では、1975年に発表された戯曲『ウエー』について書いている。
あるとき作者は、招待で北海道旅行をした。
列車の中で、隣り合わせた老人が窓の外を指し、奇怪な話をはじめます。
「いま北海道では、あのとおり、いたるところでアムダ狩りが行われている」
アムダというのは、人間そっくりの動物で、戦時中に飼育されはじめ、なめし革や食糧にも使われるという。
え、人間そっくり?
なんかゾクゾクしてきませんか。
ところがこれは、見事な「ぼくの聞き違い」でした。アムダというのは、ハムスター、人間そっくりというのは、ネズミそっくりだった、ということです。
けれどこの聞き違いから、あの不思議な戯曲が誕生することになったのだから不思議です。
作家の頭の中は、夢の中でも起きていても、きっと意識化で働きつづける、広大な宇宙のようなものなのでしょう。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。










