55歳の息子が、同居する82歳の母親を殴って死亡させるという事件について

年をとってから、子どもたちに面倒を見られたくない、
と思っている人は多いことだろう。
だれだって、子供は面倒見るものであって
自分が見られるなんてぜったいイヤと、思うはず。
でもそれを認めることが、
老後への覚悟の第一歩なのかもしれない。

私の老いはどうも視力と、物忘れからはじまったみたいだ。
日にちを間違えるくらいは序の口で、
台所で帰ってきた息子のために、
みそ汁をあたためていると、
火をとめるのをわすれて、つい世間話を始める。
小豆を煮ているのを忘れて、こげつかせる。
そんな私に、次男は、
「あ さっき」
と紙に書いて、わたしてくれた。
これをパソコンの向うの壁にはり
ときどき、ちらちらと見て、ああ、そうだった、と立ち上がる。
そのうち、この張り紙のことさえ、
忘れ去るのかもしれない。

8月11日、横浜市で、55歳の息子が、
同居する82歳の母親をなぐって死亡させるという事件があった。

なぐった理由は、洗濯物を干す干さないで言い争いになったからという。

母親は認知症だったというけれど、
なくなった母親に、もし気持ちをきくとしたら、
「息子があたしをなぐった」
と、なじるだろうか。いや、
「あたしが、洗濯物のことで、あんなことをいって、
そのせいで、息子を殺人者にしてしまった、
もっと気をつけて話していたら・・」
と、自分を責めるにちがいない。
悲しいが、母親ってそんなものだ。
母親も悲惨だが、息子も一生苦しむことになるだろう。

親子の愛が暴走せず、
穏やかな老後を迎えることが
高齢者みんなの願いだろう。

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