12月には、太宰治の名短編「メリイクリスマス」を味わおう
こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。
クリスマスにちなんだお話。太宰治の小説に「メリイクリスマス」という短編があります。
主人公の「私」は1年3か月ぶりに疎開先の津軽から東京に戻ってきましたた。「東京は、哀しい活気を呈していた」と小説の書き出しまで考えていたのに、実際の生活は、「相変わらずの『東京生活』のごとく」でした。
終戦後の東京でどこか荒んだ生活を送る私。女の身の上話を聞いても一滴の涙も流せないようになっていました。このあたりは男性作家のエゴ満載ですが、それは置いておいて・・・。
ある日、「私」は映画を観た後、本屋の入り口で、昔つきあっていて女性の娘に、ばったりと出会います。昔つきあっていた女性は貴族の生まれで、資産家の夫と別れたあと娘と二人きりで、身ぎれいにして暮らしていました。
「私」がその女性を気に入ったのは、「私」の気分に敏感だったこと、そしてその家には酒が豊富にあって遠慮なく飲めることだった、というのですから実もフタもありません。
デカダンス作家の面目躍如の生き方といういのでしょうか。
「私」は、偶然出会った娘に早くも興味を抱いています。そして一緒に、母親と住むアパートに向かいますがドアの前で引き返し、うなぎ屋の屋台で飲み始めます。
「私」と娘の間には、母のウナギと酒のコップが置かれています。
娘が「私」に出会えた喜びは純粋でしたが、「私」のほうにはどこか不純な心があったようです。
その罪悪感や羞恥心が、(趣味の悪い)客が米兵に呼びかける「メリイクリスマス」という言葉にすべて集約されています。この居たたまれなさ感、凄いですね。さすが太宰治です。
今のクリスマスシーズンにはほど遠い、終戦直後の東京の宵の雰囲気さえ感じさせるしみじみした短編です。ぜひ読んでみてください。
「メリイクリスマス」は、YouTubeでも朗読されています。私は眠る前に寝床の中で聞いてしみじみとし、翌日、本箱から取りだして再読しました。
もっと若いときには、この味わいはわからなかったですね。再読してよかった!
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。