ユートピアかディストピアか。知らないところで進んでいたおそろしい事実/「声の網」星新一の未来予測がすごい

「声の網」星新一 角川文庫

こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。

今回は、星新一の「声の網」を読んでみました。
40年以上前に書かれていますが、この未来予測におどろかされました。

この小説では、メロン・マンションの1階から12階までの住民が受け取る奇妙な電話を中心に12のエピソードにまとめられています。電話の内容は、ごく一部の人しか知らない事実や秘密。おどろく住人。そんなエピソードが淡々と積み上げられていきます。
なんでも電話で簡単にできてしまう快適な世界、実は社会を平穏に保持するための監視の網の目にがんじがらめにされていることに気づくのです。

提示されるひとつひとつのエピソードは最初、日常的でそれほど衝撃的ではないけれど、それが集積されることでおそろしい世界になっていることに気づかされます。

コンピューターは人の忠実なしもべ

コロナ禍の中にある今だから、この閉塞感がよけいに身に染みます。
穏やかさを何より大切にする機械のもとに管理される人間。これはユートピアなのかディストピアなのか。コンピューターは神になったのでしょうか?

コロナ騒動の世界にいると私たちは自由を望んでいるのか、それとも管理されたいのかわからなくなってきます。それとも、もともと自由なんてあったのでしょうかね。
この2年間人々は分断され、原始時代のようにケモノ(コロナ)におびえ、伝統文化やマナーが瓦解するのを目撃してきました。

コロナが収束すれば元の社会にもどれるのかな、とふと思います。それとも、「声の網」のようになにかに支配されざるをえないのでしょうか。

40数年前の星新一の未来予測がすごい。電話で金を振り込み、電話とつながった装置での診療も行える。これは今やコンピュータにより可能になっています。でも便利さと引き換えに、私たちが失ったものもあるはず。

「コンピューター群が人間を支配しているといえるかもしれない。しかし、コンピューター群をうみだし、このようにしたのは、人間の心によってだともいえる。人間の心の最も忠実なしもべでもある」

そして、その忠実なしもべが、忠実に使命を果たそうとするあまり人間を支配するようになる。
手塚治虫の「火の鳥」にもマザーと呼ばれるコンピューターがついに隣国との戦争をはじめる、というエピソードがありました。

この小説のテーマにもつながっている気がして呆然とします。
人々が築きあげてきた文化や叡智、家族や友人との心のつながり、そんなものをなんとかなくさないでほしいな、と思います。

最後まで読んでくださりありがとうございました。
ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけたら幸いです。

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