連続テレビ小説「風、薫る」を観ていると、三島由紀夫の戯曲『鹿鳴館』もよけいに興味深く読めそうです

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『鹿鳴館』(三島由紀夫 新潮文庫)

連続テレビ小説「風、薫る」のなかに、しばしば鹿鳴館が登場します。
三島由紀夫の戯曲『鹿鳴館』は、ちょうどこの鹿鳴館を舞台に書かれたものです。

鹿鳴館の華 美貌の伯爵夫人

主人公の影山伯爵夫人朝子は、元芸妓の美しい女性。
鹿鳴館の夜会に暗殺者が乱入すると聞いて、夫を守るために初めて西洋のドレスに身を包み夜会の女主人になろうと決意します。


着物からドレスへ、このあたり女性としての興味も惹きますが、西洋化を進める人と、それを醜いと捉え反発する人々、そこから生じる対立や陰謀、そして嫉妬まで、三島由紀夫らしい絢爛豪華でかつアイロニーたっぷりの不思議な世界を味わえます。

大夜会が開かれる日に、影山伯爵夫人朝子のもとに、朝子の昔の恋人清原が訪れます。清原らが今夜、夜会の開かれているさなかに鹿鳴館に乱入し夫の景山伯爵を暗殺するという話を耳にし、朝子自身が読んだのでした。
実は彼ら二人は昔の恋人同士で、影山の息子久雄は朝子との間の子です。


育ちのことで父に反発する純粋な青年 久雄は、老練な影山伯爵にあやつられて突発的にある行動に走ります。そしてそこから予測もつかない悲劇に・・・。
恋と政治、肉親の情、嫉妬などの愛憎渦巻く戯曲で、せりふは古典的かつ格調高く、しかも劇場向けにつくられた独特の三島由紀夫ワールドを味わえます。

政治的アイロニーたっぷり

この戯曲の中には、夜会に訪れる実在の人物として 伊藤博文、さらには大山巌、そして「風、薫る」でおなじみ 大山捨松も登場します。実在の人物が・・・とちょっと驚いてしまいました。
残念ながら容姿そのほかについては余り詳しくは書かれていません。

朝子と共にもうひとりの主要人物、夫の影山伯爵は複雑な性格です。妻を愛しながらも嫉妬から(?)相反する行動に走ってしまいます。
特に政治について語っているところは、皮肉がふくまれていて強烈です。思わずうなずいてしまったり反発したり。少し引用してご紹介すると―。

「政治とは他人の憎悪を理解する能力なんだよ。この世を動かしている百千百万の憎悪の歯車を利用してそれで世間を動かすことなんだよ。愛情なんぞに比べれば、憎悪のほうがずっと力強く人間を動かしてるんだからね」

「政治には真理というものはない。真理のないということを政治は知っておる。だから政治の模造品を作らねばならんのだ」

「なるほど私は策を弄した。だが要はあなたに、人間同士の信頼が成就するものだというお伽噺を壊してみせてあげるためだった」

なんて強烈な皮肉・・・!
この戯曲では、三島的華麗な反語の世界にひたれるとともに、今の政治についてもいろいろと考えさせられます。ぜひ読んで見てください。

「風、薫る」を観ていると戯曲『鹿鳴館』も身近に感じられます。初演では、主人公の朝子を杉村春子さんが演じられたとか。捨松はどんな女優さんが演じたのでしょうか。

鹿鳴館時代の大山捨松 画像はウィキペディアからお借りしました



今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。

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