「輝ける闇」開高健 ヴェトナムの戦いを間近に見ていた著者によるルポ、と言うにはあまりにつらく生々しく、人間の本質にも迫る作品

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「輝ける闇」 新潮文庫 開高健

「輝ける闇」開高健

ヴェトナムの戦いを実際に見た著者によるルポ、と言うにはあまりにつらく生々しく、人間の本質に迫るすぐれた文学作品だと思います。

人生ときに残酷です。そして戦争ともなればその過酷さは想像を絶する物になるでしょう。それを遠い中東や東ヨーロッパで起きているのを電波やネットを通して日々目にしています。

しかも戦争はよくない。怖い恐ろしい残酷だというのは当然なのですが、その中で人間の柔らかな身体はどのような状況下におかれ、繊細な心はどのように変わっていくのか。
そんなものをもう一度この小説の中で確かめたくて、もう一度手に取って読んでいます。全部読み返したら、また感想が変わるかも知れないので、改めて書いてみようと思います。

「輝ける闇」より抜粋

「彼は愉快げに笑い、積乱雲のかなたへ消えていく一点のジュラルミンの閃光を好ましそうに窓から見送った。とつぜんこの男は変ったと私は感じた。温厚、慎重で忍耐力にみちたこれまでの彼の顔をはじめて私は陋劣な残忍さがよこぎるのを見た。それはゾッとするような、不思議な一瞥であった。お面にあけられた穴のなかでうごく眼であった。眼そのものであった。」

「私はただ引金が引いてみたかった。満々たる精力をひそめながらなにげない顔をしているこの寡黙な道具を私は使ってみたかった。憎しみからでもなく、信念からでもなく、自衛のためでもなく、私は楽々と引金をひいてかなたの地物を倒せそうであった。」

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