「輝ける闇」開高健 ヴェトナムの戦いを間近に見ていた著者によるルポ、と言うにはあまりにつらく生々しく、人間の本質にも迫る作品
こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。

「輝ける闇」開高健
ヴェトナムの戦いを実際に見た著者によるルポ、と言うにはあまりにつらく生々しく、人間の本質に迫るすぐれた文学作品だと思います。
人生ときに残酷です。そして戦争ともなればその過酷さは想像を絶する物になるでしょう。それを遠い中東や東ヨーロッパで起きているのを電波やネットを通して日々目にしています。
しかも戦争はよくない。怖い恐ろしい残酷だというのは当然なのですが、その中で人間の柔らかな身体はどのような状況下におかれ、繊細な心はどのように変わっていくのか。
そんなものをもう一度この小説の中で確かめたくて、もう一度手に取って読んでいます。全部読み返したら、また感想が変わるかも知れないので、改めて書いてみようと思います。
「輝ける闇」より抜粋
「彼は愉快げに笑い、積乱雲のかなたへ消えていく一点のジュラルミンの閃光を好ましそうに窓から見送った。とつぜんこの男は変ったと私は感じた。温厚、慎重で忍耐力にみちたこれまでの彼の顔をはじめて私は陋劣な残忍さがよこぎるのを見た。それはゾッとするような、不思議な一瞥であった。お面にあけられた穴のなかでうごく眼であった。眼そのものであった。」
「私はただ引金が引いてみたかった。満々たる精力をひそめながらなにげない顔をしているこの寡黙な道具を私は使ってみたかった。憎しみからでもなく、信念からでもなく、自衛のためでもなく、私は楽々と引金をひいてかなたの地物を倒せそうであった。」
2024-04-26 by
関連記事
どうする家康 大坂城の落城シーン壮絶でした。千姫のほか戦から逃れた人々の中に真田幸村の娘、阿梅がいました。「幸村のむすめ」その後の運命は・・・ 兄弟のつつましい生活、心の中が愛おしさと哀しみでいっぱいになってしまう「ことり」 小川洋子 あらためて見てみると、純粋すぎる愛っていうのはつくづく怖いものなのだなと。「死の棘 (とげ)」(島尾敏雄) 源氏物語の「六条御息所」は愛が深すぎて生き霊になったけれど。 おもしろい本です、と言っていただき感謝です!!「若葉台団地 夢の住まい、その続き」 朗読にいい話ありますか? 谷川俊太郎の詩集「世間知ラズ」、宮澤賢治「よだかの星」、鴨長明「方丈記」の冒頭くらいしか思いつかない。