「じい散歩 妻の反乱」 夫婦合わせて180歳を超える新平と英子。息子たちは結婚せず今も新平は家族の保護者のまま。明るい日常の中「みんなで老いていく」という言葉が哀しい

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「じい散歩 妻の反乱」(藤野千夜、双葉社)

「じい散歩 妻の反乱」(藤野千夜、双葉社)

前の「じい散歩」に続く作品です。

主人公の新平は92歳。夫婦あわせて180歳を超えた。
妻の英子は倒れて自宅介護が必要になった。3人の息子たちは母親の面倒を見る気配もなく、新平が食事ほかもろもろの世話をしている。凄まじい老老介護の状況だ。


夫婦には3人の中年で独身の息子たちがいる。
長男は高校のころからひきこもり。次男は(自称長女)は一人だけ家を出ている。三男はわけの分からない会社をやっているらしいが、すぐに資金繰りに困り新平が尻拭いする始末。
今もって、自分が家族みんなを支えているのだ、と思う新平。つかの間の息抜きは、時間を見つけてする散歩と食べ歩きだ。

また出かけると、以前よく食べていたうな重弁当を家族みんなのために買って帰るという保護者ぶりを発揮する。さりげなく家族思いなのだ。

ある日は、次男の母校という早稲田界隈に。
大隈講堂前やら高田馬場やら庶民的な街や建物を見て歩き、かつて息子と来たというレストランに入って、なめらか肉のハンバーグを賞味する。
ほか生活の細々としたところを楽しむ新平。


どきりとしたのは新平の「みんなで老いていく」ということばだった。
これは明石家のなんとも悲しい現実なのか。

自分が老いていくのは構わない。しかし、息子たちまで老いていくというのは理不尽だ。この隠れた悲劇が明石家に重くのしかかっている。しかもひとりも結婚せず、もちろん孫もいない。

そんな悲劇をオブラートで包みながら日常生活はからりと明るく、淡々と続いていく。そう考えれば、ある意味怖い小説なのかも知れない。
しかもこんな日常は日本国中至る所で起こっているのだ。


まあ、後悔はあるにしろ、新平さんのあくまで前向きな姿勢、これは本当に愛しい。ぜひ読んで見てください。

今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。

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