歩行者天国に流れていたジャズピアノの音 あんなに明るい演奏だったかと驚く
こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。
10数年前、娘がまだ宝塚にいたころのことだ。
東京公演のあとに時間ができてしまって銀座をぶらぶら歩いていた。
歩行者天国だった。人々はみな暢気そうに楽しそうに見えた。
ふと見ると、山野楽器の前に大勢の人がいた。人々は、楽器店の店頭から流れてくる音楽に引き寄せられるように、CDが並ぶワゴンのまわりに集まっていた。
聞こえている音楽に魅せられているようだった。
かかっていたのがバド・パウエルのピアノ演奏だった。
このひとのピアノの音色は力強そうでいて哀しく、極度の緊張感の上に成り立つような危うい音楽だ。
そんなピアノの音色が銀座の歩行者天国のまん中を、なんら違和感なく流れていく光景を見るのはちょっとした衝撃だった。
わたしはボーッと突っ立ったまま、ピアノ演奏を聞いていた。
隣に立っていた品の良い中年というより初老に近い女性もバド・パウエルのCDを手にし、ワゴンの後ろのレジにいそいそと並び女性店員にわたしている。不思議な光景だった。
みんながみんなバド・パウエルを好きでたまらないようだった。破滅的で麻薬に手を出し、ついに中毒になって死んでいったこのひとのことを。ときおりユーモラスな表情をする、おとなしくて知性的な茶色い肌のピアニスト。
わたしはジャズピアノ、中でもバド・パウエルがいっとき好きで好きでたまらなかった。
呆然としつつ思い出したのは、バドのピアノが好きだった頃の自分だ。その頃の自分は決して明るくなかった。そんな自分の気分に寄り添ってくれている気がした。
日曜日の晴れ渡った秋日の午後、まるでこれが、歩行者天国にもっともふさわしい音楽だとでもいうようにずっとバッド・パウエルが流れていた。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。
コメントを残す