「永訣の朝」宮沢賢治詩集から。妹との永遠の別れ。 (あめゆじゅとてちてけんじゃ) のリフレインが切ない
こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。
詩を読んでいてときおりなんともいえない気持ちにとらわれるのは、心のひだの奥にたたみ込まれていた言葉がふと顔を出しこちらを見つめてくるからでしょうか。
これまで、肉親の死に際しての詩は何度か読みましたが、これほど切々と哀しみが胸にせまってくる詩はほかに知りません。
宮沢賢治
永訣の朝
きょうのうちに
とおくへいってしまうわたくしのいもうとよ
みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
うすあかくいっそう陰惨な雲から
みぞれはびちょびちょふってくる
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
青い蓴菜のもようのついた
これらふたつのかけた陶椀に
おまえがたべるあめゆきをとろうとして
わたしはまがったてっぽうだまのように
このくらいみぞれのなかに飛びだした
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
蒼鉛いろの暗い雲から
みぞれはびちょびちょ沈んでくる
ああとし子
死ぬといういまごろになって
わたくしをいっしょうあかるくするために
こんなさっぱりした雪のひとわんを
おまえはわたくしにたのんだのだ
ありがとうわたくしのけなげないもうとよ
わたくしもまっすぐにすすんでいくから
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
はげしいはげしい熱やあえぎのあいだから
おまえはわたくしにたのんだのだ
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死を前にした妹が高熱の中、「雨雪をとってきてください賢治兄さん」と頼みます。
苦しく重苦しい病室から兄は雪のつもった外に一気に飛び出します。
冷たいみぞれ雪を妹に食べさせ頬を冷やしてやるために。雪のひとわんをすくいとるその瞬間に、
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
のことばは、一生兄のそばにまといつく肉体から発せられた声として残りつづけます。
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
雪の中に立ち尽くし<て兄は考える。まっすぐ生きていけといってくれた妹。その瞬間、蒼天の雪景色の中で死にいく妹の記憶は兄にとって永遠のものとなる。
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
のことばとともに。
そんなことをいろいろ考えさせられ、胸がいっぱいになる
涙がこらえきれなくなる詩といえるでしょう。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。
[…] 以前、宮沢賢治の妹を亡くした際の哀しみの詩について書いた。「永訣の朝」 […]