究極の中での、人間存在の美しさと家族愛をしみじみと感じさせる短編 永井龍男「秋梅雨」

永井龍男「秋梅雨」(講談社文芸文庫「一個・秋その他」)

講談社文芸文庫「一個・秋その他」(永井龍男)から、
「秋梅雨」

つくりが完璧すぎて、能の世界をのぞいているような気のすることがある永井龍男の作品。中でもこの「青梅雨」はその壮絶な世界にことばを失う。表面上は、高齢家族の穏やかなことばのやり取りで話が進行する。

書き出しはいきなり、〈神奈川県F市で一家⒋人が亡くなっているのを親類が発見しF暑に届けた〉と、まるで新聞記事のように始まる。

主人公は、事業に失敗した77歳の男。そして、その妻と姉妹、養女の⒋人家族の話。その人々がなぜ、そろって死ななければならなかったか、家族の人々の心に寄り添いながらその最後の1日を描いている。

みんな善良で思いやりのある人々だ。

主人公はその日、責任を果たすため電車に乗って外出し待っていた家族のもとに帰る。その後は、日常の中の一コマのように穏やかに淡々とした会話が続く。
その中にあるいたわりと思いやり。穏やかさの裏側にある壮烈な覚悟、そんなものが切々と心に迫り短いけれど一度読んだら忘れられない短編です。

最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。

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