『源氏供養』橋本治 中央文庫 物語の中にある紫式部の復讐とは? ドラマ #光る君へ のまひろの思いにも通じるものがあります
こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。
『源氏供養』上 橋本治 中央文庫
若葉台にあるBOOKSTAND若葉台で見つけた一冊。
上下あったけれど、上巻だけが特に売れていた。
取りあえず上巻を読んで楽しければ下巻も・・・ということでしょうか。
筆者の橋本治氏には「窯変 源氏物語」という現代語訳もある。この訳では、源氏が「私は」で語る一人称の物語になっているようだ(まだ読んでいないが・・・)。また著者は『桃尻娘』などでも有名。
「源氏供養」は『源氏物語』について、さまざまな視点から考察。
特に目を惹いたのは、「紫式部は上級貴族の娘が嫌い」だったのでは・・・というところ。たとえば弘徽殿の女御、葵の上など、上級貴族の娘たちの描写があまりに酷い。
弘徽殿の女御の鼻持ちない様子、葵の上が格別何の印象もないまま亡くなってしまうところ。それに比べて、皇統の血筋の姫君たちは限りなく美しく上品だ。
それは、上級貴族の姫がなんだ、鼻持ちならない、という紫式部の怨念が入っているのではないかと・・・。紫式部の父、為時は優秀な学者なのに、長い間無役のままで、一家は大変な苦労をした。
大河ドラマ「光る君へ」では、まひろ(紫式部)は、貧しさのあまりついに庭に畑をつくって大根やカブを植え、そうじまでするようになった。
実際の紫式部もかなり困窮していたようだ。
倫子サロンで、「雑巾がけもしてるの」といってみんなをがく然とさせたまひろの姿を思い起こさせる。
上級貴族の娘が嫌い
紫式部は、ほんとうは上級貴族の姫が嫌いというより、その恵まれた地位に安閑として何もしない上級貴族の娘が嫌いだったのではないだろうか。
大河ドラマ「光る君へ」でも、紫式部であるまひろが、正妻になれない自分の立場をイヤというほど思い知らされている。
そして皇統の血を引く姫はそれだけで尊い、上級貴族の姫たちよりは上の存在として描かれている。それは、中級貴族の出である紫式部のある意味復讐なのではないか、という。
まあ、それも一つの理由かもしれないけれども、私には、紫式部がその人の持つ精神の気高さに重きを置いて書いているように思える。
耐えることでついに、源氏よりはるかに高い精神性を身につけた紫の上のように。
また、この本の興味深いところは、だれも気にしないような部分にも焦点を当てていることだ。たとえば、なぜ源氏は次々と女性遍歴を重ねないといけなかったのか、など。そこには、平安時代の男性がどのような存在だったのか、また女性は・・・、など追求していく過程が息を呑むほどにおもしろい。
ぜひ手に取って読んで見てください。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。