「さみしい王女・上」金子みすゞ 生誕記念出版記念から/「ひよどり越(ごえ)」という詩もあり驚く

金子みすゞは昭和初期に生きた童謡詩人。26 歳という若さで亡くなったあと、人々に忘れられていましたが、作品が発掘され発表されるやいなや注目され、こよなく愛される詩人になりました。
口ずさみたくなる素朴な詩の数々は、まるで大切な宝石箱のなかの宝もののよう。
「みんな違って みんないい」など、よく知られた詩もあるけれど、こういう詩も書いていたの・・・!と驚くような作品も。
すべての生き物へのやさしい視線をもちつつ、反語やエスプリも効いていて、ナイーブな童謡詩人というだけではもったいない。
これは、バッグに入れて持ち歩きたいようなかわいらしい詩集です。
やさしくて温もりがあってさらに、不思議な視点だなあ、と思うことも度々。そんな意外性も金子みすゞの詩の魅力だと思います。
「ひよどり越」という詩について
「さみしい王女」という題名も気になるこの詩集。
ある童話の世界のお姫様がお城にいったあと、どうなったかしら・・・というもの。
このいろいろ視点で考えるところが、金子みすゞならではですね。でもそんな視点をもつことは、ひとの悲しみも引き受けてしまうことに外なりません。
26歳でなくなった金子みすゞの哀しみを思い胸が痛みます。
ところでこの詩集のなかにはなんと、鎌倉武士ファン(私もでした 汗)に聞かせたいような「ひよどり越」という詩もあるのです。
ひよどり越
ひよどり越の
さかおとし、
蟻の大群
征めくだる
めざす平家は
梨の芯
私の捨てた
梨の芯。
峠の茶屋の
ひるさがり
ふるは松葉と
蝉しぐれ。
蟻の大群
いさましく、
梨のお城を
とりまいた。
という詩なのですが、勇ましいですね。こんなユーモアたっぷりの詩も書いていたとは驚きです。
空に無数の星を浮かべるように次々と詩を書いていった金子みすゞ。彼女の心の中には宇宙のように広大な詩の世界があったのですね。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。
古い家に引っ越し、公園で見つけた甲虫を飼う五十歳近くの新婚夫婦の物語。なぜか人生の哀れをしみじみと感じさせます。「武蔵丸」(車谷長吉) 「倍売れる細見を作ってまいります!」と蔦重。そのためには、いいものを半値でつくる。さらに花の井から伝説の瀬川名を襲名するという助けも あらためて見てみると、純粋すぎる愛っていうのはつくづく怖いものなのだなと。「死の棘 (とげ)」(島尾敏雄) 源氏物語の「六条御息所」は愛が深すぎて生き霊になったけれど。 窓の外に霧のわき出てくるところが印象的な「ミラノ霧の風景」(須賀敦子 白水ブックス) 最高におもしろくて、やがて怖くなる映画です。同名のベストセラー小説の映画化。
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