お雛様の思いでや覚え書き 武田百合子「ことばの食卓」

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こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。

「ことばの食卓」(ちくま文庫 武田百合子 画・野中ユリ) 

枇杷、牛乳、キャラメル、お弁当、雛祭りの頃・・・
どの章を読んでも、ああ、こんなことあったなと子どもの頃の記憶が懐かしく、よみがえってくるようなエッセイ。
ご存じと思いますが夫は、作家の武田泰淳。
作者が枇杷を食べていると、夫が来て「俺にもくれ」という。そして「ああ、うまいや」と、「鎌首をたてたような少し震える指を4本も使」って食べる。
作者はきっと、そんな風に無心に食べる夫のようすを感嘆して見ていたのだろう。
「ひょっとしたらあのとき、枇杷を食べていたのだけれど、あの人の指とても食べてしまったのかな」体に対する感覚が独特で不思議に魅力ある描写になっている。

特に引き込まれるのは、同居している遠縁のおばあさんが部屋いっぱいにお雛さまを飾ってくれた話。飾る手際もすごいが、ある日学校から帰ると、お雛さまは消えて。畳が見えるようになっているおどろき。これは絶対に、小さな女の子にしかわからない感覚だろう。
「お雛様はなるだけ早くしまわなくちゃいけない。長く飾っておくと、お嫁に行けない」
とおばあさん。

日本家屋の暗い座敷の奥は、神秘に満ちた舞台であり、何かの呪文のも有効な場所であるようだ。
読んでいてそんな少女の気分がうつってきて、ワクワクしたり、ちょっと怖かったり。

そして、やがて「老人性ヒステリーが嵩じてきたてきたおばあさんが、縁者の家に引き取られていった」

ここはしみじみとしてしまう。おばあさんはそれからどうなったのだろう。
このエッセイは、お雛さまを飾ったりしまったりするおばあさんの手の感触まで伝わってくるような作品です。ぜひ読んでみてください。
野中ユリさんの絵がまた素敵なのです。

今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。

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