谷川俊太郎の詩集「世間知ラズ」から/「もっと滲んで」

「世間知ラズ」(谷川俊太郎 思潮社)

こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。

今日は、非人道兵器とか義勇兵などのことばを目にし気持ちが沈んでおります。
気持ちを整えるために、大好きな谷川俊太郎さんの詩集「世間知ラズ」から、そっくり引用させていただきます。
最後のところですが、私たちは、「この文明の輝かしい部分品のひとつ」どころか、この文明の悲しい部分品のひとつに成り下がったようで、つくづく悲哀を感じてしまいます。
いや戦禍を身近に感じるいまだからこそ、詩を読むことで人は自分を取り戻せるのかもしれません。

もっと滲んで

そんなに笑いながら喋らないでほしいなとぼくは思う
こいつは若いころはこんなに笑わなかった
たまに笑ってくれると嬉しかったもんだ

おまえは今いったいどこにいるつもりなんだい
人と人のつくる網目にすっぽりとはまりこんで
いい仕立てのスーツで輪郭もくっきり

昔おまえはもっと滲んでいたよ
雨降りの午後なんかぼうっとかすんでいた
分からないことがいっぱいあるってことがよく分かった

今おまえは応えてばかりいる
取り囲む人々への善意に満ちて
少しばかり傲慢に笑いながら

おまえはいつの間にか愛想のいい本になった
みんな我勝ちにおまえを読もうとする
でもそこには精密な言葉しかないんだ

青空にも夜の闇にも愛にも犯されず
いつか無数の管で医療機械につながれて
おまえはこの文明の輝かしい部分品のひとつとなるだろう

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