谷川俊太郎の詩集「世間知ラズ」から/「もっと滲んで」

こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。
今日は、非人道兵器とか義勇兵などのことばを目にし気持ちが沈んでおります。
気持ちを整えるために、大好きな谷川俊太郎さんの詩集「世間知ラズ」から、そっくり引用させていただきます。
最後のところですが、私たちは、「この文明の輝かしい部分品のひとつ」どころか、この文明の悲しい部分品のひとつに成り下がったようで、つくづく悲哀を感じてしまいます。
いや戦禍を身近に感じるいまだからこそ、詩を読むことで人は自分を取り戻せるのかもしれません。
もっと滲んで
そんなに笑いながら喋らないでほしいなとぼくは思う
こいつは若いころはこんなに笑わなかった
たまに笑ってくれると嬉しかったもんだ
おまえは今いったいどこにいるつもりなんだい
人と人のつくる網目にすっぽりとはまりこんで
いい仕立てのスーツで輪郭もくっきり
昔おまえはもっと滲んでいたよ
雨降りの午後なんかぼうっとかすんでいた
分からないことがいっぱいあるってことがよく分かった
今おまえは応えてばかりいる
取り囲む人々への善意に満ちて
少しばかり傲慢に笑いながら
おまえはいつの間にか愛想のいい本になった
みんな我勝ちにおまえを読もうとする
でもそこには精密な言葉しかないんだ
青空にも夜の闇にも愛にも犯されず
いつか無数の管で医療機械につながれて
おまえはこの文明の輝かしい部分品のひとつとなるだろう
2022-03-01 by
関連記事

魂を呼び戻そうと病床の回りで「へ、へ」と踊りつづける皆さん。熱い友情のシーンでした。蔦重がいなければ歌麿も、北斎も、八犬伝も生まれなかったでしょう 
朗読にいい話ありますか? 谷川俊太郎の詩集「世間知ラズ」、宮澤賢治「よだかの星」、鴨長明「方丈記」の冒頭くらいしか思いつかない。 
「夢の検閲官」(筒井康隆)。毎夜人の頭の中の法廷で、夢を見させるかどうか検閲する検閲官たち。ある夜、女性の夢に現われようとしたのは・・・ 
BOOKSTAND若葉台の「シニアライフ」コーナーで「老いの福袋」(樋口惠子)を購入し読んでいます 
べらぼう第33回 庶民が米不足で苦しみ「打ちこわし」が起こるなか、江戸城内では意次→定信、高岳→大崎へのし烈な権力移行が進行中です






[…] と、こういう詩ですが、まだまだ長いです。「もっと滲んで」前にも紹介しているので、ぜひこちらを見てください。 […]