『一色一生』(志村 ふくみ 講談社文芸文庫 )3月の桜は花を咲かすために樹全体に命を宿してる、という。

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『一色一生』(志村 ふくみ 講談社文芸文庫

志村ふくみさんは1924年生まれの染織家。草木染めの糸による紬織を「芸術の域に高めた」として高く評価されている。

また文筆家としても名高い。染色の作業そのもののように、色彩が匂い立つような文書はただただ美しい。

特に植物から色を抽出するところが印象的だ。
友人が桜の色を出そうとして、花弁をたくさん集めて抽出したが、灰のような色しか出せなかったという。

3月に桜の枝を切っている老人に出会い、志村さんは枝をいただいて帰ってきた。それを煮出したところ、ほんのりとした「樺桜のような桜色」に染まったそうだ。
また、9月頃、桜の枝をせん定するという話をきいて、もらいに行くが、これでも桜色にはならなかった。

3月の桜の樹が宿している命

そして3月の桜が、「花を咲かすために樹全体に宿している命」について思い至る。
だから満開の桜は、花が樹の命をもらって全身で咲かせているのだ。
植物の命の不思議さと、生き物が本来もつ生命力の強かさを感じさせられる。この部分の生き生きとした描写が素晴らしい。

京都上賀茂に住まいがあるという。古い日本の染色に魅入られ、上賀茂の緑の中で色を育んでいる志村ふくみさんの姿はほんとうに美しい。

信心深かった母の思い出を語るところもも印象的。美しい所作や、人への思いやりなど、伝統的な日本女性の美しさを感じさせる。

染色に取り組む粘り強さなども、この母から学ばれたのではないだろうか。
私たちが、そんな日本女性の良さを失っていなければ良いが、と思う・・・。読む前とあととでは、人生観さえ変えてしまう一冊です。

昨年春の京都御苑の桜です

今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。

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