子育ての最終章はとっくに過ぎたのに、中年の息子に「誕生日おめでとう✨プレゼント何がいい?」と尋ねてしまうお母さんいますか。

こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。

45歳の息子に「誕生日おめでとう✨プレゼント何がいい」と尋ねてしまうお母さんいますか。

今日は長男の誕生日だった。
「誕生日おめでとう✨」とラインで送る。
そして、「プレゼント送りたいけど何か欲しいものありますか」と。

ああ、なんてありきたりな言葉・・・。
もうこんな言葉しか送れないのだ。
確かに母親だったあのころから、何十年も隔たってしまった。そしてもう私の言葉は息子のもとには届かない。

あのときが子育ての最終章で、子別れのときだった。あとになってそれがわかった。その時のことを記憶に留めたくて、数年前、「若葉台団地 夢の住まい、その続き」の本の中にも書いた。

本の中から少し引用します――
     

 ❇     ❇

「若葉台団地 夢の住まい、その続き」から

 数日間、団地の上に雨が降り続けていたそんなある日のことでした。私は洗い上げた洗濯物をどこに干したら良いのかと迷っていました。ベランダに出せば、1日の終わりには、水気を含んで垂れ下がりその家の主婦をあざ笑い続けるでしょう。

 頭の上を母親の抱えた重そうな洗濯カゴが何度か行き来して、長男はようやく寝そべっていた体を起こしました。そして半分立ち上がりかけながら言いました。
「今日お昼作って食べさせてあげようか」
 私は面食らいました。この差し出された親切にどう答えたらいいのかと。
「何か作れるの?」
「スパゲッテイを作るよ。えーと、タラコと何かキノコがないかな」
「ああ、タラコスパゲッティね。キノコはどんなのがいいの」
「何でもいいんだ。キノコなら。それからできたらワインもあるといいな」
「ワインなら、お父さんが飲んでしまった。少し残しておいてもらえばよかったわね」

「この前、親父が飲んでたのは赤だろう。使うのは白ワインなんだ。タラコだから。魚介類の一種だろう。だから白でないといけないんだ。この前テレビで言ってたよ」
「困ったわね」 私はちょっと残念そうな顔になったようです。
「いいよ、いいよ、別にワインじゃなくたって。日本酒だっていいんだ」
 それから私はスーパーに走り、タラコ、シメジ、マッシュルーム、ついでにオリーブオイルとニンニクを買い物かごの中に入れました。そして家に帰ると、それらをひとつひとつキッチンの流し台の横に並べました」

 長男は、中学生の時に体育の授業ではいていたあずき色のジャージ姿です。裾は引きずってだいぶズタズタになっています。昨夜も遅くまで起きていたのか少々はれぼったい目です。それを無理にこじ開けるようにして、母親と自分のための昼食作りに取りかかりました。

 しばらくすると、テーブルの上には湯気の上がったタラコスパゲッティの皿が2つ並びました。麺は黄金色に輝き、タラコが人生の大いなる喜びのようにこんもりとのっています。湯気の中で空気が微かに揺らいでいました。雨はまだ降り続いていました。けれど幸福感を減らすものではなく、安息のための香辛料として必要なものでさえありました。
 腰を降ろし、ゆっくり味わって食べました。私は少しはしゃいだ気持ちになり、それを心の中にとどめようとしたので、ちょっと涙ぐんでしまいました。

 そして次に思い出すのは、長男が友人のS君の運転する軽トラックに載って家を出て行った日のことでした。そんなことを考えながら公園の遊水池の回りを何周も歩きます。ジョギングしている人や、ウォーキングの人々とすれ違います。きっと皆さん、私のように子育てを卒業し、頭の中でいろいろな記憶を反芻させながら歩いているのかもしれませんね。

森にも公園にも遊歩道にも、廃校になった校舎にも思い出がいっぱいです。だから、問題がいろいろあるのは知っているけれど、ここを離れられないのかもしれません。
「みんな一緒に、こうして、若葉台に住み続けられたらいいですね」
私はいつか心の中で話しかけていました。


❇      ❇
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。

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