短いストーリー。増えていく花について

 こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。
 短いストーリーです。

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 恋人同士の男女がいた。
 娘はつつましく文句を言わない。
 なんでも、男の言うことをきく従順な女性。
 金がなくて困っていると言えば、なけなしの貯金をはたいて男に用立ててやった。
 女のただひとつの趣味は造花を作ること。

 やがて男は会社の上司に見込まれて、上司の娘と結婚する。
 当然、男は娘を捨てる。


 娘は、男とつき合っていた頃から日記代りにブログをつづっていた。
 結婚した後も男は、自然に手が動いて女のブログを見る。

 ブログの中に、ちまちました女の日々の生活が描かれている。
 まるで部屋をのぞき見しているようだ。
「何を見てるの?」(妻)
「いや、別に」(男

 男はそれからも、習慣のように娘のブログを見る。
 その日娘は、布で1つのバラの花を作り掌に乗せて写真を撮っていた。
 白い清潔感のある花が一輪、女の掌の上でつつましく光沢を放っている。

 翌日も女は花を一輪載せた。
 花はどんどん増えていく。
 沢山の白い花の間にポツンと写真立てが置かれる。
 まるで遺影のように。

 写真はまだ入っていない。
 さあ、だれの写真が入るのでしょう。
 そう言われているようで、男はなぜかゾクッとする。

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