「ルネサンスの女たち」塩野七生 「君主論」のマキアベリが賛美した チェーザレ・ボルジアも登場します

「ルネサンスの女たち」(塩野七生 中央公論社)

こんにちは、ゆきばあです。毎日ブログを更新しています。
私の若い頃の、たいへん古い本の紹介で恐縮です。

この本は、史実の中の悪女を紹介するとかそういう類のものではないです。
イタリア都市国家の時代、国同士が激しくせめぎ合う中、数奇な人生を送りつつ力強く生きる4人の女性の物語。

知性と勇気で国を守ろうとした女性、「イタリアの女傑」とまで呼ばれたひと、そして普通の人生を送れたかもしれないのに父と兄が並はずれた人物だったため、数奇な運命をたどることになる女性。
この本の中では、女性を描きつつ同時に周りの男性も描いている。

彼ら都市国家のせめぎ合いの中に生きる人々の中心命題は、どうやって他国から自分の国を守るか。または権謀術数を使ってでも他国を打ち負かし自国の領土を広げるか。

毒薬と共に語られる ルクレツィア・ボルジア

ルクレツィア・ボルジア ヴァチカン内「ボルジアの部屋」の壁画より

本書の中で特に気になるのは、ルクレツィア・ボルジアだろう。
ベネチア金髪を肩に垂らした甘いマスクのこの女性は、どちらかといえば普通の女性だった。けれど父が教皇アレクサンドロ6世、兄があの悪名高きチェーザレ・ボルジアという非凡な男たちだったことが、彼女に普通の人生を歩ませなかった。

ボルジア家の毒薬、とよく言われる。
ルクレツィアは複数回結婚するが、前夫の死など不審な点が多い。
そのため毒薬と関連して語られることが多いけれど、本当の悪者は兄のチェーザレ・ボルジアだ。

チェーザレは悪名高いだけでなく、ルネッサンスに現れる傑出した人物とされる。
大変な美男で権謀術数、政治的な駆け引き、なんでもあれで父が教皇アレクサンドロ6世になるやいなや、野心をむき出しにしてイタリア全土に自国の領土を広げようとした。
当時のイタリアで、最も恐れられた人物でもある。けれど父の死によって野望は頓挫する。

「君主論」の作者マキァヴェリは、チェーザレ・ボルジアを理想的な君主として賞賛している。「君主論」が生まれた背景には、当時のイタリアにおける都市国家間の激しい競合があった。領主たちは自国を守るためなら戦いをいとわず、だまし合いのような政治的駆け引きも行った。
そして熱の渦のようなイタリアルネッサンス期を生き抜き、芸術をも開花させたのだ。

力で国を守ることが生きることの一部だった彼らに、話し合いで解決できるなどと言ったらびっくりされるのがおちだろう。

ぜひ一読されることをお勧めします。

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