「ジョゼと虎と魚たち」(田辺聖子) 足の不自由な女性と大学生との不思議な恋。2人の住む星明かりのさす部屋には水族館と幸福と死のイメージ。
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「ジョゼと虎と魚たち」(田辺聖子) 足の不自由な女性と大学生との不思議な恋。星明かりの差す部屋に水族館と幸福と死のイメージが入ってくる
「ジョゼと虎と魚たち」(田辺聖子 新潮文庫)
ジョゼが赤ん坊の時に母親は彼女をおいて家を出てしまいます。14歳の時に父が再婚したまま母も、車いすで生理の始まった娘の面倒を見るのを厭い施設に預けられます。そして後には、父方の祖母に引き取られて暮らします。
祖母は、脚のわるい孫を恥じて外には出さず、夜になるとジョゼを車いすに乗せて散歩につれ出します。ある夜、坂道に停まっているときに、誰かの悪意で後ろから押され車いすが急スピードで下り始めます。それを止めてくれたのが大学生の恒夫でした。
やがて恒夫は、祖母とジョゼの家に頻繁に訪れるようになり、祖母の作った粗末な手料理を旨そうに食べていきます。
忙しさに訪れないでいるあいだに、祖母は亡くなりジョゼは段ボール以外何もない部屋にひとり住んでいます。市松人形のようにきれいでか弱いジョゼをおいておけず、恒夫はかいがいしく面倒を見、二人は夫婦のように一緒に住むようになります。
動物園に初めて行ってどうもうな虎を見て恐怖に駆られつつ見ずにはいられないジョゼ。そして、水族館は、ジョゼにとって安らぎの場に思えます。
二人の部屋が星明かりで水族館に
そして夜になって二人の住むアパートの一室に、星明かりが指してくると、そこは安らぎに満ちた水族館と化すのでした。「ジョゼは幸福を考えるとき、それは死と同義語に思える」のでした。
「アタイたちは、お魚や死んだモンになった・・・」とジョゼ。
恒夫と部屋にいる、そこが最高の安らぎの場なのであり、それが死に近づくことでもあるのだと言っているようです。
孤独の意味や、人と一緒にいることの幸せの意味、そんなことをしみじみと考えさせてくれる小説です。
2003年に、池脇千鶴、妻夫木聡主演で映画化されているので、ご覧になった方も多いと思います。こちらでは、ライバルの女性が登場したり、青春映画のような味わいになっているようです。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。ほかにも日々の思いを書いていますので、目を通していただけましたら幸いです。