紫式部先生にきく 〈6〉~じっと寂しさに耐えることで途方もない幸せを娘にあたえた女性
今年のNHK大河は、紫式部が主人公の「光る君へ」。
こちらのブログでも「紫式部先生」に登場願い、『源氏物語』の中の女性たちを中心に、あれこれ人生訓などを語っていただこうと思います。
絵:夏城らんか ©
「源氏物語」日本人ならだれでも知っていますね。世紀の貴公子、光源氏が美女たちとくり広げる恋模様を描いたお話…。
でも、ご存じですか? 源氏に大切にされた女性のなかには、お姫さまらしい華やかさでなく、庶民性ややさしさ、賢さで幸せになった女性もいたのですよ。それは明石の君!
いったいどんな女性だったのでしょう…
その1、「娘、最高」のちょっと迷惑な父に育まれる
父の明石入道はひとり娘に夢中。
「なんとか、高貴な身分の婿を見つけてやりたいなあ」
父の果てしない野望に、
半ばあきらめ気味の明石の君。
「もう、両親が死んだら、あたしは尼になるか海にでも身を投げるしかないわね」
その2、プリンス源氏が明石に登場
そこに、禁断の恋がバレて
須磨・明石に逃れてきたプリンス源氏。
絶好のチャンス!と、明石入道。
「なんとか源氏の君と娘を引き合わせたいなあ」
「身分違いです」(母)
そんな言葉には耳も貸さない明石入道でした。
その3、過度にエンリョするやさしさ
父の野望についていけない明石の君。
「そんなエラい人には会いたくないです」
キッパリと源氏を拒絶。
それが逆にプリンス源氏の興味ひくのです。
「お高くとまってるな。でも気になる。いったいどんな女性なんだろう」
と、そわそわ。
その4、源氏を呻らせる美しい文字と文
「会えないなら取りあえず手紙でも書くか」
返ってきた明石の君の手紙は、予想をはるかにこえる品の良さ。
「六条御息所みたいにきれいな字だなあ」
都の匂いを感じつつ、すっかり参ってしまう源氏でした。
ようやく会ってみれば、鄙にはまれな美しさ品の良さ。
源氏は、たちまちとりこになってしまうのです。
その5、宝物のような娘誕生!
ついに可愛い姫君が誕生。
源氏は娘にデレデレ。
そして、さらに、
「この娘を将来入内させて、と。それには母の身分がちょっとなあ・・・」
と、早くも思いを巡らすパパ源氏。
「そうだ!紫の上に育ててもらおう」
その6、愛娘と涙をのんでの別れ
いよいよ二条の邸に姫をひきとることに。
姫を牛車に乗せる明石の君。
母も一緒に行くものだとばかり思い、
「乗りたまえ」
と、母の袖をひく姫君。
ここたまらないですね。全女性が泣いてしまう場面。
愛する娘と引き離された明石の君。
彼女が幸せだったかどうかはわかりません。けれど自分を犠牲にしてまで娘の幸せを願ったのはたしか。
あたくし紫式部にも娘がひとりおります。自分を犠牲にしても娘を・・・と考えなくもないですが、つらい決断だったには相違ありませんね。
境遇の中で耐えしのび、娘に最高のプレゼントをした明石の君。その気持ちを受け止め明石の姫君を大事に育てた紫の上。
この二人の女性の姿は、どこまでも美しく慈愛に満ちています。
コホン。あたくしたちも見習いたいものですね。
いかがでしたか? 「明石の君」の女性に、あたし、紫式部は、「自分の幸せを手放すことで、逆に訪れる大きな幸せもある」というメッセージを託したのです。
昔も今も、時代が変わっても、人を愛する心は変わらず、幸せを手にする方法はさまざまですね。