ノベル
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2024年02月26日
ツグミ団地の人々〈苦い水 8〉
「あなたも? とてもそんな風には見えないわ」 美佐子は、タカ子の健康そうな身体にちらりと一瞥をくれた。それは老齢に差しかかった女が若い...
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2024年02月22日
ツグミ団地の人々 〈苦い水 7〉
「あんたたち、ママに叱られるよ」タカ子が大声で叫ぶ。「へいきだよ」男の子が大きな声でこたえる。 母親たちもまったく気にする様子がない。...
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2024年02月18日
ツグミ団地の人々〈苦い水 6〉
その日、平八と皆川が電話の前で衝突したのは当然の帰結だった。内心ハラハラしていたことが起こったのだ。 電話が空くのをじりじりしながら...
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2024年02月14日
ツグミ団地の人々〈苦い水 5〉
その時、入口のドアがバンと開いて、西部劇のアウトローよろしく皆川義男が肩をいからせ店内をにらみすえながら入ってきた。店に姿を見せるの...
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2024年02月11日
ツグミ団地の人々〈苦い水4〉
せかせかと席に戻る途中、中年女の二人連れの椅子に杖をぶつけて危うく転びそうになる。ジョギング帰りらしい派手なウェットスーツを着た女た...
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2024年02月07日
ツグミ団地の人々 〈苦い水3〉
ナイフで残りのバターを塗り付け、焦げ目の付いたところにシロップをたっぷりかけると、平八は最後の数切れをうまそうに口に運んだ。酒を飲ま...
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2024年02月04日
ツグミ団地の人々〈苦い水2〉
そのころ、ひとりの老人がコーヒーショップつぐみに向かっていた。老人は鶴田平八といい、ツグミ団地と県道にはさまれた三角土地に立つ一軒家...
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2024年02月02日
ツグミ団地の人々〈苦い水 1〉
美佐子が購入したコーヒーショップつぐみは、美佐子の住むツグミ団地から歩いて十分ほどの駅のガード下にある。入り口は狭く、中も幅が狭いが...
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2024年01月24日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩15 了〉
その夜、疲れていたので彼らは早く布団に入った。彼はいつもの癖で息子のことをぼんやり考えていたのだが、しばらくして妻が口にしたのはまっ...
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2024年01月19日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩14〉
帰ってくると妻は二人分の茶をいれ、また息子の話をする。 「小さいうちからお話しができて、あんなおりこうな子はいなかった。あの子の履いて...
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2024年01月16日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩13〉
横のボックス席に座った男女が話している。「いい加減、みんな引っ越していけばいいのにね」「限界団地っていわれてるらしいな」「おお、怖い...
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2024年01月11日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩12〉
二人は散歩の帰りで疲れていたので、ぼーっと座って温かい紅茶を飲んでいた。 里子が、ふいに二人の方を見ていった。「隆史君は元気ですか」 ...