ノベル
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2024年01月08日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩11〉
磨りガラスの外側に、ドアにもたれるようにして人が立っているのが見えた。そしてよく見ると、しわくちゃのおばあさんの顔が、精一杯店の中の...
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2024年01月04日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩10〉
「あら、里子ちゃん、めずらしい」澄子が素っ頓狂な声をあげた。妻が下の名で呼ぶのは、だいたいが隆史と同級かそれに近いような者に対してだ。...
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2023年12月30日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩 9〉
一時間もせずに彼らはその家をあとにした。「あの子は、ほんとにバラ作りの名人ね」 後ろから澄子が話しかける。「そうだな」彼は気がなさそ...
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2023年12月26日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩8〉
「ずいぶんよく咲いているな」 彼はティーカップを口から離すと出窓の外に咲き誇るバラに見惚れながら言う。息子が父親の方に向き直り、息を整...
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2023年12月22日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩7〉
商店街の外れで和菓子を売っている店に立ち寄り、店主の老人に大福餅を十個ほど包んでもらった。「おみやげにちょうど良いわね」「で、やっぱ...
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2023年12月18日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩6〉
二人はしばらく視線を合わせず、通りの別の方向を見ていた。彼はそのうち頭の芯が重くなりいつしか、うとうとしていた。 二人はまた病院の...
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2023年12月14日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩5〉
病院はターミナル駅と直結している。ホームから歩いていくと、いつの間にか病院の受付の前に来ているのだ。 待合室には、多くの老人たちがいた...
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2023年12月10日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩4〉
時計の針が八時を指すと、彼らはウォーキングシューズをはいて外へ出る。 今日は月に一度、澄子が病院に行く日に当たっている。彼らは玄関を...
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2023年12月06日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩3〉
朝食の途中で彼は台所に行って薬缶を火にかけた。 一時、安全のためにIHヒーターにしたのだが、炎が出ないのが心許なく、また元のガステー...
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2023年12月02日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩2〉
夢の中で彼はあの男になりきっていた。「この茶碗はいいだろう」 古い通路を抜けて、暗い展示ケースの前に立つと彼は得意げにいった。そうし...
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2023年11月28日
ツグミ団地の人々〈二人の散歩 1〉
戦前は銀行のホールだったという、円柱の柱の並ぶサロン風の展示室。ビル自体は数年前、高層のものに建て替えられたのだけれど、中にすっぽり...
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2023年11月17日
ツグミ団地の人々 〈レモンパイレディ 16 了〉
それから間もなく妄想がひどくなったということで、誰かが引き取りに来て、そして車でどこかへ行ってしまった。 あの女の子の人形もどうな...