ノベル
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2022年10月05日
グリーンベルト (11)
外が明るくなって電車はいつか地上に出ていた。 昨日までの晴天が嘘のように沈鬱な空だった。緑色の野原が、その下に湿気のある黒土がある...
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2022年09月30日
グリーンベルト (10)
「感謝祭はアメリカ人にとって、特別なお祭りなのよ」 ヘレンは顔を赤らめて言った。 それから彼女が話したのは、ピルグファーザーズについて...
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2022年09月26日
グリーンベルト (9)
「あたしは生まれてから一度も、肉を口にしたことないの。でも、とても元気」 ある日、ヘレンは笑いながら言った。 ヘレンは敬虔なキリスト...
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2022年09月21日
グリーンベルト(8)
「あたしは日本人がだいすき」 ある日ヘレンは、顔を赤らめていった。「ほんとー、うれしいわ」「日本のどこが好きなの」 私たちは口々にいっ...
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2022年09月16日
グリーンベルト (7)
私たちはツアー・モービルに乗ってアーリントン墓地に向かっていた。 なだらかな丘の傾斜地に、見渡す限り白い小さな墓石が点々と並んでいた...
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2022年09月11日
グリーンベルト (6)
ホワイトハウス前の緑の多い公園を足早に横切っていく。銅像の下の片隅に男の人がうずくまっているのが見えた。顔は汚れ人種...
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2022年09月06日
グリーンベルト (5)
言い出したのは、わたしだったか葉子さんだったか。君江さんでなかったのは確かだ。君江さんは午後は、市内のデパートにショッピング行きたか...
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2022年09月02日
グリーンベルト (4)
アメリカは人種のるつぼというけれど本当にそうだ。 ワシントンD.C.の市内を3人で歩いていると、日本にいるときよりずっと多くの視線を...
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2022年08月29日
グリーンベルト(3)
もう、かれこれ30年近く前になる。わたしたちは、ワシントンD.C.のメトロセンター駅から地下鉄に乗った。朝、ホテルの縦長の窓から空を...
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2022年08月25日
グリーンベルト(2)
こんなおばあさんが、アメリカだなんて変よね。もう30年近く前になるわね。今じゃ、脚が痛んでろくに団地の部屋からも出られないのに。まあ...
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2022年08月21日
グリーンベルト(1)
うつむいて食べていた女の子がいきなり高い声で叫んだ。妙に気まずい中で食事が進行していたときだった。 「パパ、みっともないわよ。ちゃん...
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2022年04月26日
眠り草 (15)
思いがけず健司から電話がきたのは、その翌日だった。「おばさん、なぜいってくれなかったの」「なんのこと」「あのことだよ・・・・・・」 ...