ノベル
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2023年07月25日
ツグミ団地の人々 〈小鳥が逃げた 9〉
夏が終わり、秋が近づいているそんな九月の一日だった。空が高くなって青く澄み、涼しい潮風が団地のベランダにまで吹き込むんでいた。 奈々...
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2023年07月19日
ツグミ団地の人々〈小鳥が逃げた 8〉
数週間ほどたった日曜の午後、茂夫は奈々連れて外出し、小鳥の巣箱を買って帰ってきた。 父親は、鳥たちをいったん別の小さいカゴに移してか...
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2023年07月14日
ツグミ団地の人々 〈小鳥が逃げた7〉
そんな何日かが過ぎたある日、奈々が怯えた顔でキッチンに駆け込んできた。「チーが変だ」「どうしたの」「目が小さくなって、グルグルいって...
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2023年07月08日
ツグミ団地の人々 〈小鳥が逃げた6〉
小鳥が家に来た日のことは、奈々もよく覚えている。幼稚園で同じさくら組の坂井くんがある日、奈々のそばに来ていった。「インコのヒナがさ、...
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2023年07月03日
ツグミ団地の人々 〈小鳥が逃げた 5〉
昼頃から吹き始めた風が、スナック梢のドアを時折カタカタと揺すった。まるで見えない客がここに誰か鋳るのかと確かめるように。「そうはいっ...
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2023年06月29日
ツグミ団地の人々 〈小鳥が逃げた 4〉
夫の茂夫と離婚したのは奈々が小学校に入学する少し前のことだった。 茂夫は車が好きで、チェックの上着に白いズボン、先の尖った履を吐いて...
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2023年06月23日
ツグミ団地の人々 〈小鳥が逃げた 3〉
前を歩く男の傘からぽたぽたと雫が落ちていく。バス券の自動販売機が白い明かりを漏らし、細かい霧状の雨が周囲の闇に次々と吸い込まれていく...
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2023年06月17日
ツグミ団地の人々 〈小鳥が逃げた2〉
美佐子が購入したコーヒーショップは、美佐子の住むツグミ団地から歩いて十分ほどの駅のガード下にある。早紀の澄む入り口は狭く、中も幅が狭い...
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2023年06月13日
ツグミ団地の人々 〈小鳥が逃げた 1〉
台風が近づいていた。ドアを開けると突風が塊となって店内に吹き込んできた。 「何してるの。早くドアを閉めてよ」 みんな風に目がくらみ立ち...
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2023年04月24日
グリーンベルト(50)
「それから一度もヘレンにもキヨミさんにも会ってないわ」 私はキヨミさんの顔を思い出そうとした。それは30年前のあのときの顔で、彼女もす...
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2023年04月19日
グリーンベルト(49)
「そんなことで、私たちは翌日日本に帰ってきたのよ。キヨミさんをさんざん説得したのよ。でもやはり無理だったわ」「無理だなんて、そんなこと...
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2023年04月15日
グリーンベルト (48)
明日は早く起きなければいけない。それなのに、ベッドに入るのがすっかり遅くなってしまった。「あなたはなぜ、別れないの」 もう眠ろうとし...