ノベル
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2023年03月17日
グリーンベルト (43)
夕方を過ぎ、夜になってもしょぼしょぼと雨が降り続いていた。窓の向こうに見える棟が薄闇の中にそびえ、細い階段にぽつんぽつんと明かりが灯っ...
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2023年03月11日
グリーンベルト(42)
聞こうとして、ふと周りにだれもいないのに気がついた。葉子さんも、君江さんの姿も見えない。 私はあせってふたりの名前を呼んだ。そしてもう...
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2023年03月05日
グリーンベルト (41)
キッチンには古い鍋や釜が置かれている。時代を経て黒みを帯び頑丈であと百年たっても二百年経っても壊れそうになかった。 中庭に暑い日差...
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2023年03月01日
グリーンベルト (40)
船が桟橋に横付けされた。 船を下りた途端にツーンと強烈な花の匂いが鼻腔をついた。花の匂いはいたるところにあった。まるで島中を刺激的な...
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2023年02月24日
グリーンベルト (39)
ポトマック川を下っていって、ジョージ・ワシントンの農場のあるマウント・バーノンまでは、船で三十分ほど。背後にワシントンD.C.が小さ...
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2023年02月18日
グリーンベルト(38)
朝食をとるときくらい仲良くしていられる。私たちはしばらく無言で食べ物に向かっていた。 ふと顔を上げると、君江さんがまた流し目をくれて...
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2023年02月13日
グリーンベルト (37)
どうしたの。あなたすごく顔色が悪いわよ」「なんでもないんです」「知り合いの方かなんか、外にいたの」「いえいえ、だれもいませんよ。風が強...
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2023年02月08日
グリーンベルト (36)
「ああ、やれやれ、これでやっと日本に帰れるんですね」 恵子さんがあくび混じりの声で言った。「そうね、なんだかずいぶん長い旅だったような...
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2023年02月01日
グリーンベルト (35)
「まあ、あなたが、あれほど勧めなきゃ、きっと来なかったと思うわ」 君江さんは冷静に言った。「もしこれで、あなたの家に何かあったら、あた...
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2023年01月28日
グリーンベルト(34)
ちょっとした諍いが起こったのはその夜ホテルに帰ってからだった。君江さんが入浴を済ませたあと、髪をタオルで拭きながら葉子さんと何か話し...
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2023年01月22日
グリーンベルト(33)
運転席に再び体を押し込めながらヘレンは言った。「半年前に倒れて、それから少し痴呆が始まったみたいなのよ」 先ほどの食事の際ボブさん...
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2023年01月18日
グリーンベルト(32)
家を出ようとする前、ヘレンは悲壮な決意でもするように私たちに言った。 ひとつひとつの言葉をゆっくりと、かみしめるように。そしてときど...