ノベル
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2023年06月23日
ツグミ団地の人々 〈小鳥が逃げた 3〉
前を歩く男の傘からぽたぽたと雫が落ちていく。バス券の自動販売機が白い明かりを漏らし、細かい霧状の雨が周囲の闇に次々と吸い込まれていく...
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2023年06月17日
ツグミ団地の人々 〈小鳥が逃げた2〉
美佐子が購入したコーヒーショップは、美佐子の住むツグミ団地から歩いて十分ほどの駅のガード下にある。早紀の澄む入り口は狭く、中も幅が狭い...
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2023年06月13日
ツグミ団地の人々 〈小鳥が逃げた 1〉
台風が近づいていた。ドアを開けると突風が塊となって店内に吹き込んできた。 「何してるの。早くドアを閉めてよ」 みんな風に目がくらみ立ち...
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2023年04月24日
グリーンベルト(50)
「それから一度もヘレンにもキヨミさんにも会ってないわ」 私はキヨミさんの顔を思い出そうとした。それは30年前のあのときの顔で、彼女もす...
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2023年04月19日
グリーンベルト(49)
「そんなことで、私たちは翌日日本に帰ってきたのよ。キヨミさんをさんざん説得したのよ。でもやはり無理だったわ」「無理だなんて、そんなこと...
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2023年04月15日
グリーンベルト (48)
明日は早く起きなければいけない。それなのに、ベッドに入るのがすっかり遅くなってしまった。「あなたはなぜ、別れないの」 もう眠ろうとし...
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2023年04月10日
グリーンベルト1(47)
その時、窓の下の植え込みで人影が動いたように思え、カーテンを引いた。人の早足に去って行く後ろ姿が見えた。下に降りて誰かを確かめた方が...
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2023年04月05日
グリーンベルト (46)
夕方しょぼしょぼと雨が降り続いていた。今日はまだ、恵子さんが来ない。 「変だね、時間をとっくに過ぎてるのに」夕暮れるのが早くなって、部...
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2023年03月28日
グリーンベルト (45)
ヘレンは女の子を目に留めると、そばに近づいて、耳元にやさしい声で言った。「まあーー、驚いたわ。ずいぶん大きくなったのね。あたしのこ...
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2023年03月21日
グリーンベルト (44)
ヘレンが赤い顔で駆け込んできたのは私たちがデザートも食べ終え、もうそろそろ帰ろうと思っていたときだったわね。気まずさは最後までつづき、...
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2023年03月17日
グリーンベルト (43)
夕方を過ぎ、夜になってもしょぼしょぼと雨が降り続いていた。窓の向こうに見える棟が薄闇の中にそびえ、細い階段にぽつんぽつんと明かりが灯っ...
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2023年03月11日
グリーンベルト(42)
聞こうとして、ふと周りにだれもいないのに気がついた。葉子さんも、君江さんの姿も見えない。 私はあせってふたりの名前を呼んだ。そしてもう...