ノベル
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2023年02月01日
グリーンベルト (35)
「まあ、あなたが、あれほど勧めなきゃ、きっと来なかったと思うわ」 君江さんは冷静に言った。「もしこれで、あなたの家に何かあったら、あた...
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2023年01月28日
グリーンベルト(34)
ちょっとした諍いが起こったのはその夜ホテルに帰ってからだった。君江さんが入浴を済ませたあと、髪をタオルで拭きながら葉子さんと何か話し...
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2023年01月22日
グリーンベルト(33)
運転席に再び体を押し込めながらヘレンは言った。「半年前に倒れて、それから少し痴呆が始まったみたいなのよ」 先ほどの食事の際ボブさん...
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2023年01月18日
グリーンベルト(32)
家を出ようとする前、ヘレンは悲壮な決意でもするように私たちに言った。 ひとつひとつの言葉をゆっくりと、かみしめるように。そしてときど...
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2023年01月13日
グリーンベルト(31)
それから私たちは、お別れの雨の湿っぽい気持ちでめいめいいすに座っていた。 部屋のカーテンは下ろされ、弱い明かりの下に人々の顔だけが...
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2023年01月07日
グリーンベルト(30)
「息子が一人いたのよ」 ショッピングセンターに向かう車の中でキヨミさんは言った。 「でも、三歳のと...
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2023年01月06日
グリーンベルト (29)
「まあ、だれかしら」「どなたかお客さんですね」「訪ねてくれるお客なんてないわ。代わりに出てくださる。どうせセールスマンか何かよ」「わか...
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2022年12月28日
グリーンベルト(28)
窓の外に一瞬車のライトの光がさあっと当たって室内を照らした。「誰の車かしら」 ヘレンが急いでドアを開けてポーチに出た。車はゆっくりカ...
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2022年12月23日
グリーンベルト(27)
下の洗面所が塞がっていたので、寝室のを借りようと二階へ上がった。 階段はすでに足下が暗く、上りきると寝室のドアが開いていて、奥に白い...
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2022年12月18日
グリーンベルト(26)
森の中の広場は暮れなずみ、退職者たちの住まいのようなこじんまりとした家々の窓から弱い明かりがもれていた。車の音を気にしたのか八〇歳過...
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2022年12月14日
グリーンベルト(25)
私たちは駐車場を出るとだらだらした丘のような道を下り、大きな建物の中に入っていった。日本のアウトレットのような店を巨大にして中を迷路に...
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2022年12月10日
グリーンベルト(24)
「あなたには、○○さんがいいと思うわ」 君江さんがまた、さっきの南米出身の経済学者の名前を言った。「あなたのこと満更でもないと思ってる...