ノベル

  • 2021年11月26日

    抜け道(17)

               女ってのは結婚してしまうとつまらなくなるもんだ。遠藤菊子が帰ったあとの茶の間で彼はひとりごちる。 そのまま、倒し...

  • 2021年11月23日

    抜け道 (16)

     玄関に入ると、下駄箱の上に見慣れたチラシが二枚重ねて置かれていた。遠藤菊子がすぐに出てきて、オーバーに顔をしかめていった。 「お留守...

  • 2021年11月20日

    抜け道 (15)

     それからはセールスマンにも近所の主婦たちにも、家にやって来た人間には残らず鉢植えの花を渡した。強引とも思えるほどに、あるときは必死の...

  • 2021年11月17日

    抜け道 (14)

     弟が亡くなって半年も過ぎると、ようやく落ち着いた生活が戻ってきた。急に電話がかかってきて弟のことを聞かれたり、怪しげな男たちが塀の外...

  • 2021年11月14日

    抜け道(13)

     大通りを折れるあたりで、十五年前に死んだ妻のことを、しきりと考え始めた。 妻は外に出るのを嫌った。自分の考えというのをもたなかった。...

  • 2021年11月11日

    抜け道 (12)

     女二人の笑い声で、彼はふと我に返った。彼はあまりに深く考え込んでいたので、自分がどこにいるのか、すぐには気づかないほどだった。女たち...

  • 2021年11月08日

    抜け道 (11)

     彼の家は長命の家系だが、弟は五十を前に死んだ。出奔して数年後に病院から電話が入った。癌はもう手遅れなほど広がっていた。以前入院してい...

  • 2021年11月05日

    抜け道 (10)

     弟はある日、四気筒エンジンのオートバイを人から借りてきて、二人でT川の川っぷちを吹っ飛ばした。少女はよく一緒についてきて、うすい茶が...

  • 2021年11月02日

    抜け道 (9)

     栗色の女は、ごそごそとバッグを探り底の方から、木でできた車のおもちゃを取り出して、はい、と子供に渡した。それから電子手帳をテーブルの...

  • 2021年10月29日

    抜け道(8)

     弱い陽が、二人の栗色の髪と赤い紙の上に降り注いでいる。彼は、なんとなく話を聞きながら、ゆっくり新聞をめくる。赤い髪の女は煙草を吸い、...

  • 2021年10月25日

    抜け道 (7)

     路地を出ると駅のドーム型の屋根が見え始める。 キン、コン、カン、けたたましい音をさせて遮断機が彼の目の前で下り、快速電車が長い車両を...

  • 2021年10月21日

    抜け道 (6)

     ガードレールの下をくぐると目の前が開け、通り沿いに古くからの商店が並ぶ、路地が口を開けている。そこから大勢の女が出入りしていた。一人...

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