今夜は中秋の名月「月見座頭」に描かれた人間の二面性?
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今夜は中秋の名月。
皆さま、お月見の夜、どのように過ごされていますか。
8年ぶりの満月ということで、今年はまた特別な感慨がありますね。
煌々と輝く月ですが、その裏側は真っ暗な闇。
それと同じように、
「人間には二面性がある。ジキルとハイドのように。
それを描かなくちゃ、おもしろくない」
と、いったのは狂言役者・茂山千之丞さんです。
それはどんな意味なのでしょうか。
「芸とは口説くことだ!」
狂言界の異端児といわれた千之丞さん。
一度、国立能楽堂で舞台を拝見しましたが、その演技はワクワクするくらいおもしろいものでした。
吉本新喜劇にも通じるような狂言の楽しさを改めて認識した次第です。
惜しいことに、10年ほど前に亡くなられましたが、
その著作に「狂言じゃ 狂言じゃ」(文春文庫)というのがあります。
この中で千之丞さんは、 「芸とは口説くことである」
と漱石の言葉を引用して述べています。
舞台、芸能などは、芸のすべてを駆使して、お客を口説き、
虚の世界へ引きずりこんでしまうことだそうです。
この口説きを使うあたり、 恋愛と一緒だそうですよ。
千之丞さんはきっと、狂言がどうしたらよりおもしろくなるか、
お客さんに喜んでもらえるか、日々そればかりを考ていた人なのでしょう。
「月見座頭」に表れるひとの二面性
「狂言じゃ 狂言じゃ」の中で、「千之丞さんは月見座頭」について紹介しています。
ちょっと、いえ、かなり不思議な話なのです。
ある夜、十五夜の月が煌々と照る野原に一人の座頭がおりました。
そこへ男が通りかかり、不思議に思って、何をしているのかと聞きます。
「私は虫の声をきいて楽しんでいるのです」
男はうなずき、ふたりはその場で酒盛りをはじめます。
気持ちもぴったり合って、飲むほどに酔うほどに話もはずみ、しっとりとした酒宴がつづきます。
やがて酒宴は終わり二人は別れます。
男は立ち去りかけますが、ふと悪戯心を起こします。
そして、座頭のところに近寄っていくと、声音をかえてケンカをふっかけます。
座頭の体を引きずり回し投げ飛ばしてしまうのです。
そして、『あとは知らぬぞ、知らぬぞ』そう言いながら去っていくのです。
冴えた月の光のもとに座頭はひとり取り残され、つぶやきます。
「今の人は、さっきのお方とはずいぶん違うひどい奴だ」
秋の夜風が身に染みて、一つクシャミをすると、座頭はとぼとぼと去っていきます。
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人間ってもともとダメなものなのか・・・
月の表と裏のように、「ジキルとハイド」のように、人間には相反する二面性がある。
この二面性を描き、「ドライに人間の本性を見きわめるのが狂言の目」なのだそうです。
まあ、こんなお話なのですが、
月に照らされた野原に座頭の困惑とあてどもなさが広がって、
ちょっぴり切なくてばかばかしく、そして怖いお話ですね。
怪しくも美しい月の光のなせる技でしょうか。
故立川談志師匠は生前、
「酒が人間をダメにするんじゃない。人間はもともとダメだということを教えてくれるものだ」
といっていたそうですが、特にお酒を飲んだときには、くれぐれもご用心!
隠していた自分の別の本性が、月の光のもとにさらされてしまうかもしれません
私も気をつけねば(^_^;)
最後まで読んでくださってありがとうございました。